【2025年版】クリニック向けIT導入補助金の完全ガイド|費用も手続きも解説
患者対応に追われながらも、診療の質を維持し、スタッフの負担も軽減したい——。
そんな悩みを抱えるクリニック経営者の方にこそ知っていただきたいのが「IT導入補助金」です。
国が実施するこの補助制度を活用すれば、電子カルテやレセコン、予約システムなど、業務効率化に直結するITツールを導入する費用の一部を補助してもらえます。
実際にこの制度を使って、紙カルテから脱却し、月間10時間以上の業務時間を削減した医療機関も存在します。
ただし、申請にはgBizIDの取得や支援事業者との連携など、専門的な手続きが必要です。
本記事では、IT導入補助金の基本から申請手順、導入できる具体的なツールや成功事例までをわかりやすく解説します。
初めての方でも安心して取り組めるよう、要点を整理してご紹介していますので、まずは制度の概要をしっかり把握し、自院の経営改善に向けた一歩を踏み出してください。
目次
IT導入補助金とは?クリニックが活用するべき理由
クリニック経営では、日々の診療に加えてスタッフの勤怠管理、レセプト請求、会計処理など、事務業務の負担が重くのしかかります。限られた人員と時間でこれらを正確かつ迅速に行うには、ITツールの導入が不可欠です。そこで注目されているのが、国の支援制度である「IT導入補助金」です。
この補助金は、電子カルテやレセコン、予約システムなどの導入費用を最大450万円まで補助してくれる制度です。とくに中小規模のクリニックにとって、コスト面のハードルを下げながら業務を一気に効率化できる大きなチャンスです。
以下のような課題を抱えている場合は、制度を積極的に活用するべきです。
・紙カルテの管理が煩雑で、記録の検索や共有に時間がかかっている
・受付や会計業務にスタッフが多く割かれ、診療時間が圧迫されている
・レセプト作成ミスが多く、診療報酬の回収率に不安を抱えている
・人材確保が難しく、業務の自動化を進めて省人化を実現したい
補助金を活用することで、業務の精度を高めるだけでなく、患者対応の質も大きく向上します。待ち時間の短縮やスムーズな会計処理は、患者満足度を左右する重要な要素です。
また、申請のハードルが高いと感じる方には、実績豊富な申請代行サービスもあります。IT導入補助金に精通した支援会社を活用すれば、煩雑な手続きを自院で抱え込む必要はありません。
IT導入補助金の基本概要
IT導入補助金は、正式名称を「サービス等生産性向上IT導入支援事業」といい、経済産業省が主導する国の制度です。中小企業や小規模事業者の業務効率化とデジタル化を支援する目的で実施されています。
2025年度の補助金制度では、以下の2つの枠が用意されています。
区分 |
通常枠(A類型・B類型) |
インボイス対応類型 |
補助率 |
1/2(最大で2/3) |
2/3~最大4/5 |
補助金額 |
5万円~450万円未満 |
5万円~350万円未満 |
対象となる経費 |
ソフトウェア・クラウド利用料・導入設定費など |
ソフト・ハードの導入一式 |
主な活用目的 |
業務のデジタル化・効率化 |
電子帳簿保存・インボイス対応 |
補助率の違いは、導入するツールの種類や機能によって決まります。たとえば、レセコンや会計ソフトなど、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が必要な場合は、より高い補助率の枠が適用されます。
クリニックであれば、主に以下の目的で活用されています。
・電子カルテ・レセコン・予約システムの導入
・勤怠管理、在庫管理の自動化
・オンライン資格確認やマイナ保険証対応システムの整備
複数ツールをまとめて導入することで、補助額を最大限活用しやすくなります。診療だけでなく、事務・経理・受付まで一気にデジタル化を進めたい方にとって、非常に有利な制度です。
医療機関が補助対象になる条件とは
IT導入補助金は、医療機関を含む幅広い業種の事業者を対象としています。ただし、すべてのクリニックが無条件で対象となるわけではありません。以下の条件を満たす必要があります。
対象条件 |
内容 |
法人形態 |
医療法人、個人事業主いずれも可 |
規模の目安 |
常勤換算で従業員300人以下(パート含む) |
登録ITツールの導入 |
事前に事務局に登録されたITツールであること |
IT導入支援事業者との連携 |
補助金申請は支援事業者経由でのみ可能 |
gBizIDプライムとSECURITY ACTIONの取得 |
事前にアカウント取得と情報セキュリティ宣言が必要 |
医療機関が導入できるITツールは、医療業向けに特化した「業務プロセス」カテゴリに分類されます。これは、診療・画像・会計情報を一元的に扱う電子カルテなどが対象です。ホームページ制作やSNS運用ツールなど、汎用的なツールだけでは申請ができません。
また、法人格に関係なく、マイナ保険証対応やレセプト処理を外部委託しているクリニックも申請対象となります。判断が難しい場合は、事前に無料診断を受けることをおすすめします。
電子カルテやレセコンは補助対象になる?
電子カルテとレセコンは、IT導入補助金において最も導入事例の多い代表的なITツールです。どちらも医療業務の根幹を担うシステムであり、事務作業の効率化だけでなく、医療の質の向上にも直結します。
ツール |
主な機能 |
活用効果 |
電子カルテ |
患者情報・検査・処方内容の |
情報検索の迅速化、紙カルテの保管コスト削減、ペーパーレス化 |
レセコン |
診療報酬の自動計算・請求処理 |
計算ミスの防止、レセプト作成の時間短縮、会計業務の精度向上 |
連携システム導入 |
電子カルテ+レセコン |
入力作業の簡素化、二重入力の排除、患者対応のスピード向上 |
電子カルテやレセコンの導入費用だけでなく、以下のような周辺費用も補助対象に含まれます。
・導入に関わる設定費・操作マニュアル作成費用
・クラウド利用料(クラウド利用料は最大2年分まで補助対象となる場合があります)
・保守サポート契約費用
・セキュリティ対策のための追加オプション
導入対象として登録されている製品の一例は以下の通りです。
製品名 |
主な特徴 |
CLINICS |
クラウド型電子カルテ、予約・問診と一体化可能 |
MAPs for CLINIC |
レセコン連携型の中小クリニック向け電子カルテ |
Medix(メディクス) |
中堅クリニック向けのオンプレミス型、豊富な導入実績 |
こうした製品はすべてIT導入補助金の事務局に事前登録されている必要があります。選定に迷う場合は、実績ある支援事業者と連携することで、スムーズな製品選定と申請が可能になります。
すでに導入を検討している方も、補助対象かどうかの確認を怠ると申請却下のリスクがあります。制度の詳細とツールの適合性について不安がある場合は、実績豊富な申請サポート会社への相談を検討してください。
IT導入補助金2025の最新制度概要
IT導入補助金2025は、制度内容にいくつかの変更点が加えられ、より実用的で幅広い業種への対応が進んでいます。特に中小医療機関向けの支援枠が拡充されており、電子カルテや会計システムの導入を検討しているクリニックにとって、絶好のタイミングです。
今回の制度は大きく2つの類型に分かれています。ひとつは業務効率化や業績改善を支援する「通常枠」、もうひとつは電子帳簿保存法やインボイス制度に対応した「インボイス対応類型」です。
両者には補助率や対象経費に明確な違いがあるため、目的や導入ツールに応じて適切な申請区分を選ぶ必要があります。
通常枠とインボイス対応類型の違い
IT導入補助金2025では、「通常枠」と「インボイス対応類型」が用意されています。両者の違いを理解することで、自院に最適な制度を選択できます。
項目 |
通常枠(A・B類型) |
インボイス対応類型 |
主な目的 |
業務の効率化・売上向上・診療品質の向上 |
インボイス制度や電子帳簿保存への対応 |
補助率 |
1/2(B類型は2/3も可) |
最大4/5(条件を満たす場合) |
補助金額 |
5万円~450万円未満 |
5万円~350万円未満 |
対象となる機能 |
電子カルテ、レセコン、予約システムなど |
電子帳簿保存ソフト、インボイス対応会計ツールなど |
ハードウェア購入 |
対象外 |
一部条件付きで対象 |
対象企業の条件 |
中小企業・小規模事業者 |
小規模事業者が優遇(従業員5人以下など) |
通常枠は、クリニック業務全体の改善に適した類型です。電子カルテ、診療予約システム、画像管理ソフトなど、医療に特化したITツールが広く対象になります。
一方で、インボイス対応類型は制度改正への準備に焦点を当てた支援策です。医療業界でも領収書の電子化や外部業者とのやり取りでインボイス制度に対応する必要がある場合、この類型の活用が効果的です。
両者を併用することはできません。導入ツールや今後の運用体制に応じて、どちらの類型を選ぶか明確に決定する必要があります。
補助額・補助率・対象経費の具体例
IT導入補助金の魅力は、導入コストの一部を確実に補填できる点にあります。補助額や補助率の仕組みはやや複雑な印象がありますが、以下の表で概要を確認できます。
類型 |
補助率 |
補助額(下限~上限) |
主な対象経費 |
通常枠A類型 |
1/2 |
5万円~150万円未満 |
ソフト購入、設定費、クラウド |
通常枠B類型 |
最大2/3 |
150万円~450万円未満 |
ソフト+周辺ツールの一括導入 |
インボイス対応類型 |
最大4/5 |
5万円~350万円未満 |
電子帳簿保存、会計ツール、周辺機器 |
補助金をより多く受けるためには、「1プロセス」だけでなく「4プロセス以上」に該当するITツールを導入する必要があります。たとえば、以下のような構成がよく選ばれています。
・電子カルテ(診療情報管理)
・レセコン(請求・会計処理)
・予約システム(受付・診療スケジューリング)
・勤怠管理ツール(スタッフの労務管理)
これらを一括で導入すれば、最大450万円まで補助される可能性があります。個別に導入するより、まとめて導入したほうが申請面でもメリットが大きくなります。
また、申請には「IT導入支援事業者」を通す必要があり、自社で購入したソフトウェアや機器では補助を受けられない点に注意が必要です。
クラウド利用料やハードウェアも対象になる?
IT導入補助金では、ソフトウェアの購入費だけでなく、一定条件を満たしたクラウド利用料やハードウェアも対象になります。具体的な内容は以下の通りです。
経費区分 |
対象となる内容 |
備考 |
クラウド利用料 |
最大1年間の利用料が対象。電子カルテなどのSaaS型サービスが該当 |
月額費用も補助対象 |
ハードウェア |
POSレジ、スキャナ、券売機、パソコンなど |
インボイス対応類型かつ機器セットでの申請に限る |
導入関連費 |
導入設定、保守契約、導入研修、マニュアル作成費など |
導入事業者経由の見積が必要 |
特にクラウド型電子カルテは、初期投資が少なく、ランニングコストを分散できる点でクリニックに人気があります。このクラウド利用料が補助対象になることで、導入直後の費用負担を大きく軽減できます。
一方、ハードウェアについては条件が限定されます。単体での購入は対象外となり、インボイス制度対応ソフトとセットになっている場合などに限られます。
導入予定の機器やサービスが対象になるかどうか判断に迷う場合は、無料の診断サービスや専門業者への相談が有効です。制度内容は毎年変わるため、常に最新情報をもとに判断することが必要です。
クリニックで導入できるITツール一覧
IT導入補助金の対象となるITツールは、単に便利な機能を持つだけでなく、「業務プロセスを改善するかどうか」が基準とされています。クリニックにおいては、診療、受付、会計、勤怠管理といった複数の業務が並行して行われているため、それぞれの工程を効率化できるITツールの導入が非常に効果的です。
ここでは、実際に補助金制度の中で多くのクリニックが導入している主要なITツールをカテゴリごとに紹介します。機能だけでなく、導入によって得られる具体的な成果にも注目してください。
電子カルテ:情報一元化・業務効率化を実現
電子カルテは、患者情報、検査結果、画像、投薬履歴などを一元的に管理できる中核的なITツールです。紙カルテに比べて情報の整理・検索が圧倒的に早く、診療の質とスピードが大きく向上します。
導入前の課題 |
電子カルテ導入による改善効果 |
カルテの記載・管理が手作業中心で非効率 |
検査データ・投薬履歴が一目で確認可能に |
他スタッフとの情報共有が遅く、診療の質にムラがある |
チーム全体で情報をリアルタイム共有、連携強化 |
保存スペースが必要、紛失リスクがある |
デジタル管理で省スペース化、情報紛失のリスクも大幅に低減 |
【主な対応製品例】
・CLINICS(クリニクス):クラウド型、予約・問診との統合に強みあり
・Medix(メディクス):中規模クリニック向け、カスタマイズ性が高い
・MAPs for CLINIC:電子カルテとレセコンの連携性が優秀
これらの製品はすべてIT導入補助金の登録ツールに含まれており、クラウド利用料や導入設定費用も補助対象です。
レセコン:診療報酬請求の自動化で業務負担軽減
レセコン(レセプトコンピューター)は、診療報酬の請求業務を自動化するシステムです。保険診療の内容を正確にデータ化し、請求書を効率的に作成できます。ミスや遅延を防ぐだけでなく、未収金の回収率向上にもつながります。
導入前の課題 |
レセコン導入によるメリット |
手入力による請求作業に時間がかかっていた |
自動計算により入力工数を大幅に削減 |
診療報酬の計算ミスによる返戻・減点が発生 |
法令対応の最新ソフトで返戻リスクを最小化 |
受付・会計・レセプト業務の属人化が進んでいた |
担当者不在でも業務が標準化され、属人化リスクを回避可能 |
【主な対応製品例】
・MAPs for CLINIC:カルテ連動型のクラウドレセコン
・ORCA(日本医師会ORCA管理機構):信頼性の高いオープンソース型
補助金を活用することで、初期費用だけでなく設定作業やマニュアル作成などの導入関連費も支援対象になります。
予約・受付システム:患者満足度と業務効率の両立
予約や受付のデジタル化は、スタッフの負担軽減だけでなく、患者の待ち時間短縮や満足度向上にも大きく寄与します。最近ではLINEやWeb経由での事前問診機能も統合されており、診療のスムーズな開始が可能になります。
従来の課題 |
システム導入後の成果 |
電話予約の応対で受付業務がひっ迫していた |
Web予約による自動化で受付の人件費削減 |
予約のダブルブッキングや抜け漏れが発生 |
時間帯ごとの自動振り分けで予約ミスを防止 |
問診に時間がかかり診療が押すことがあった |
事前問診入力で診察前に内容を把握、診療の質も向上 |
【主な対応製品例】
・CLINICS予約:電子カルテと連携、Web問診・リマインド機能も搭載
・カルー(Karoo):患者の属性に応じた予約制御が可能
これらのシステムはクラウド型であるため、利用料や設定費が補助対象になります。スマートフォン対応も進んでおり、高齢者を除いた大多数の患者にとって利便性が高いです。
在庫・勤怠・オンライン診療などその他のツール
IT導入補助金では、診療業務に直接関係しない管理系のツールも対象になります。特に人材不足や業務の属人化に悩むクリニックでは、これらのツールが業務の標準化に大きく役立ちます。
ツール種別 |
主な機能 |
活用効果 |
在庫管理システム |
薬剤や消耗品の入出庫管理、発注通知 |
在庫切れ防止、過剰発注の抑制 |
勤怠管理システム |
出退勤・残業・有給の記録と管理 |
給与計算の効率化、労務トラブルの予防 |
オンライン診療 |
ビデオ通話、予約、診療報酬請求の |
患者の利便性向上、通院困難層への対応 |
【主な導入例】
・KING OF TIME(勤怠):法改正対応も充実
・メドレー:オンライン診療と電子カルテの連携が可能
・Zaico(在庫):スマホ対応でスタッフの操作負担を軽減
これらのツールも「業務プロセスの改善」を目的として導入される場合、補助金の対象になります。特にオンライン診療は感染症対策の観点からも注目されており、導入実績が急増しています。
IT導入補助金の申請手順とスケジュール
IT導入補助金を活用するには、決められた手順に従って申請を進める必要があります。特に初めて申請するクリニックにとっては、用語や書類の多さに戸惑う場面も多くなります。ですが、各ステップを正しく踏めば、補助金を確実に受け取ることができます。
申請から補助金交付までにはおおよ_、3 ~ 6か月程度の期間がかかります。スケジュールを逆算しながら、早めの準備を進めることが成功のポイントです。
STEP1:gBizIDプライムの取得とSECURITY ACTIONの宣言
申請前の事前準備として、まずは以下の2つを完了させる必要があります。
項目 |
内容 |
gBizIDプライムの取得 |
補助金申請に必要な法人・個人の認証アカウント |
SECURITY ACTIONの宣言 |
セキュリティ対策に取り組むことを宣言する自己評価制度 |
● gBizIDプライムとは?
経済産業省が提供する法人・個人事業主向けの認証サービスで、IT導入補助金のオンライン申請に必須です。申請からID取得までに2週間程度かかる場合があるため、早めに申請する必要があります。
申請には印鑑証明書や登記簿謄本が必要です。郵送での本人確認手続きがあるため、開業直後のクリニックは余裕をもって取得を進めてください。
● SECURITY ACTIONとは?
IPA(情報処理推進機構)が提供する制度で、情報セキュリティに取り組む事業者として自己宣言を行います。IT導入補助金を申請するには、「★一つ星」の宣言が必須です。宣言そのものは無料で、Webから簡単に手続き可能です。
STEP2:IT導入支援事業者とITツールの選定
IT導入補助金の申請は、自社単独ではできません。必ず「IT導入支援事業者」を通して、登録済みのツールを選ぶ必要があります。
手順 |
内容 |
IT導入支援事業者の選定 |
専門知識を持つ事業者と契約し、ツール選定・申請を支援してもらう |
登録ツールの中から選定 |
事前に事務局に認可されたITツールに限定 |
導入計画の策定と見積もり取得 |
システム導入スケジュール・金額を事業者とすり合わせる |
【支援事業者を選ぶポイント】
・医療機関への支援実績が豊富
・電子カルテやレセコンに詳しい
・申請代行サービスを提供している
・導入後のサポート体制が整っている
医療業界では、CLINICS、PullNet、メタゲートなどの実績ある事業者が多くの申請をサポートしています。単にツールを売るだけでなく、補助金活用の成功まで伴走してくれるパートナーを選ぶことが重要です。
STEP3:交付申請から補助金交付までの流れ
申請はすべて専用ポータルサイトから行います。流れは以下のとおりです。
No |
手順 |
概要 |
所要時間 |
1 |
交付申請の準備 |
導入予定のITツールと経費、事業計画を記載した申請書類を作成します |
約2週間 |
2 |
交付申請の提出 |
ポータルサイトでオンライン申請を行います(支援事業者がサポート) |
約1か月 |
3 |
審査・採択通知 |
審査結果は通常1か月以内に通知されます 採択されなければ導入できません |
|
4 |
契約・導入開始 |
採択後に契約し、ITツールの導入作業を開始します 事前契約は対象外になります |
約2~3か月 |
5 |
実績報告の提出 |
導入完了後、報告書や領収書を添付し事務局に提出します |
|
6 |
補助金の受け取り |
実績審査に通れば、指定口座に補助金が振り込まれます |
報告から1~2か月後 |
すべてを完了するまでに最大6か月程度かかるケースもあるため、申請締切や導入希望時期に応じて逆算する必要があります。
申請時の注意点とよくあるミス
申請書類やプロセスが明確に定められている一方で、実際には以下のような理由で申請が却下される例も少なくありません。
よくあるミス |
理由 |
gBizIDの取得が間に合わない |
発行に時間がかかり、申請締切に間に合わないケースが多発 |
導入済みのツールに対して申請してしまう |
交付決定前に契約・導入した場合、全額補助対象外になる |
補助対象外の経費を含めて申請してしまう |
ハードウェアや外注費が不適切に含まれていることがある |
書類の不備や添付漏れ |
記入漏れ・押印漏れ・証明書類の不備などで再申請になる可能性大 |
特に、「交付決定前に契約してしまった」ケースは非常に多く、これだけで全額自己負担になるリスクがあります。見積もりや選定はしても構いませんが、正式な契約は必ず交付決定通知が届いてからにしてください。
スムーズに申請を進めるには、IT導入支援事業者や補助金申請代行会社と密に連携しながら、チェックリストを活用して準備を進めるのが安心です。申請支援を受けることで、事務的なミスを未然に防ぎ、採択率も大幅に向上します。
クリニックがIT導入補助金を活用するメリット
IT導入補助金を活用する最大のメリットは、費用負担を抑えながらも、医療現場の業務効率とサービス品質を同時に向上できる点にあります。特に中小規模のクリニックにおいては、人手不足や経営の属人化など、構造的な課題を抱えているケースが多く見受けられます。
そのような背景の中で、ITツールの導入は単なる「便利さ」のためではなく、経営安定化と地域医療の質を保つための必須戦略となりつつあります。ここでは、IT導入補助金を活用することで得られる3つの大きなメリットについて解説します。
業務の効率化と人件費の削減
クリニックでは医師・看護師・事務スタッフが多くのタスクを並行してこなしています。電話予約、カルテ記入、レセプト処理、勤怠管理といった業務は、ITを活用することで大幅に効率化できます。
業務プロセス |
導入前の状態 |
IT導入後の改善効果 |
予約受付 |
電話対応が中心、受付スタッフが対応に追われる |
Web予約・LINE予約で自動化し、受付負担を半減 |
カルテ記録 ・情報共有 |
紙ベース、閲覧・記録に時間がかかる |
電子カルテでリアルタイムに情報共有、検索も |
レセプト請求 |
手作業・ダブルチェックが |
自動計算・法令対応ソフトでミス削減と短時間処理を実現 |
勤怠管理 ・給与計算 |
タイムカードと手作業計算 |
勤怠システムで集計・連携、時間外計算も自動化 |
これらの改善により、1か月あたり10~20時間の業務時間削減が見込まれます。時間的余裕ができれば、職員の残業が減り、離職率の低下にもつながります。特に人材採用が困難なエリアにおいては、限られたスタッフで最大の成果を出すための基盤になります。
また、補助金を活用すれば、クラウド利用料や設定費用も含めて数十万円単位の導入費用を軽減できるため、費用対効果の高い投資が可能になります。
患者サービスの質向上と集患対策
IT導入補助金で導入可能なITツールの中には、患者サービスを直接向上させる仕組みが多数含まれています。特に予約・受付・問診といった「患者接点」の領域は、サービス改善のインパクトが大きく、集患にも直結します。
改善領域 |
導入可能なツール |
患者目線での変化 |
予約・受付 |
Web予約・LINE予約 |
電話不要で24時間いつでも予約可能、待ち時間の短縮へ |
問診・診療前準備 |
事前Web問診システム |
来院前に症状入力、医師の予習が可能で診療がスムーズに開始できる |
会計・処方 |
自動精算機、キャッシュレス決済 |
会計待ち時間の短縮、感染リスク低減、利便性の高さが患者満足につながる |
こうした仕組みは、患者からの「通いやすいクリニック」としての印象を高め、口コミや再来院率の向上に寄与します。特に都市部では他院との競争が激化しており、こうした差別化ポイントが重要になっています。
さらに、受付スタッフの業務も軽減されるため、限られた人材でもサービス品質を維持できます。導入費用を補助金でカバーすることで、初期投資に対する心理的ハードルも大幅に下がります。
経営リスクの低減と将来の制度対応への準備
ITツールの導入は、日々の業務効率化だけでなく、将来的な制度変更への備えとしても大きな意味を持ちます。
近年では「電子帳簿保存法」や「インボイス制度」など、クリニック経営にもデジタル対応を求める法改正が相次いでいます。
将来の制度 |
IT導入で対応可能な内容 |
対応しない場合のリスク |
電子帳簿保存法 |
レセプト・帳簿・領収書の電子保存 |
紙保管による検索困難、税務調査対応の煩雑化 |
インボイス制度 |
インボイス発行・受領記録のデジタル保存 |
消費税還付の対象外となり、経営上の損失を被る可能性がある |
診療報酬改定やマイナ制度 |
電子カルテ連携でマイナ保険証や資格確認対応が可能 |
厚労省からの制度導入義務への未対応で行政指導・機会損失の恐れ |
今後もデジタル化を前提とした制度設計が進む中で、IT導入ができていないクリニックは「時代遅れ」と見なされる可能性があります。補助金を活用することで、数十万円~数百万円に及ぶ設備投資を一部国費でまかなうことができ、経営リスクを抑えながら制度変化に柔軟に対応する体制を構築できます。
また、万が一の災害や感染症拡大といった緊急時にも、クラウド型のシステムを導入しておけばデータの復旧や遠隔操作が可能になります。経営のレジリエンス(回復力)という観点でも、IT化は今後欠かせない基盤です。
活用事例に学ぶ!IT導入補助金で変わったクリニックの実例
IT導入補助金は、制度として理解するだけでなく、実際に導入した医療機関の事例を見ることで活用のイメージが具体化します。全国にはすでに数千件を超える医療機関がこの制度を活用し、経営の効率化とサービス向上を同時に実現しています。
ここでは、電子カルテ、勤怠・在庫管理、満足度の可視化など、それぞれ異なる課題を解決した3つの導入事例を紹介します。どの事例も、IT導入補助金を活用したことで「やりたくてもできなかった改善」に踏み切れた点が共通しています。
電子カルテとレセコンで紙からの脱却
東京都・整形外科クリニック(1日平均来院数:60人)
導入ツール:CLINICS電子カルテ+MAPsレセコン
補助額:約160万円(通常枠B類型で申請)
導入前の課題 |
導入後の改善内容 |
紙カルテを手書きで記録しており、診察後の事務処理が煩雑だった |
タブレット入力で即時記録、患者回転率が約15%改善 |
情報共有が遅れ、看護師と医師で確認ミスが発生することがあった |
電子カルテにより全スタッフが同時に患者情報を把握可能に |
月末のレセプト処理に時間がかかり、残業が慢性化していた |
レセコン連携により自動請求、月末作業時間を約10時間削減 |
補助金を活用したことで、以前から検討していたシステム一式の導入が現実のものとなりました。紙ベースから脱却できたことで、「業務が止まる」「記録が曖昧になる」といった現場のストレスが大幅に軽減され、スタッフのモチベーションにも好影響が出ています。
勤怠管理・在庫管理の自動化による生産性向上
大阪府・内科クリニック(職員数:12名)
導入ツール:KING OF TIME(勤怠管理)、ZAICO(在庫管理)
補助額:約90万円(通常枠A類型)
導入前の課題 |
導入後の効果 |
タイムカードを手集計しており、ミスや打刻漏れが頻発していた |
自動集計により月末処理が1日から数時間に短縮 |
薬剤や衛生用品の在庫管理がExcelで属人化していた |
クラウド在庫システムで発注履歴・数量を全員で共有可能に |
管理業務の負担が重く、患者対応時間に影響していた |
事務業務の時間削減により診療補助の余裕が生まれ、患者対応の質が向上 |
こうした管理系のITツールも補助対象に含まれる点は、医療現場においてまだ十分に浸透していない分、導入による差別化効果が高くなります。システム導入後は院長が「業務改善が見える化された」と語っており、次は帳簿管理ツールの導入も検討中とのことです。
導入効果の「見える化」で職員の満足度もUP
福岡県・小児科クリニック(スタッフ構成:医師1名、看護師2名、受付2名)
導入ツール:CLINICS電子カルテ、LINE予約、サイボウズ(業務共有)
補助額:約130万円(通常枠B類型)
課題 |
改善内容 |
業務改善の成果が実感しづらく、スタッフのやりがいが見えにくかった |
IT導入による成果を週次で共有、改善提案が現場から自然に出るようになった |
スタッフの残業や負担が可視化されていなかった |
業務時間・作業件数を自動記録し、効率改善に貢献 |
院内のコミュニケーションが紙や口頭に依存していた |
サイボウズ導入で申し送りや共有事項の記録が習慣化、ミスが激減 |
この事例では、業務効率化そのものよりも「スタッフのモチベーション向上」に焦点を当てた改善が行われました。システム導入で業務負担が軽くなっただけでなく、全体の生産性が可視化されたことで、達成感を持って働ける環境が整備されました。
職員満足度が上がることで、患者応対にも余裕が生まれ、結果として患者満足度の向上にもつながるという好循環が生まれています。
活用事例からもわかる通り、IT導入補助金は単なるコスト支援にとどまらず、「業務の質を一段階上げるきっかけ」として多くの医療機関に恩恵をもたらしています。
導入すべきツールが明確な場合はもちろん、「まだ何を入れるべきか分からない」という段階でも、実績ある支援会社に相談すれば自院に最適な構成を提案してもらえます。
まとめ:IT導入補助金を活用して、クリニックの未来をつくる
IT導入補助金は、単にITツールの導入費用を一部補助してくれる制度ではありません。人材不足や業務の属人化といった、現代の医療現場が直面している構造的な課題に対して、本質的な解決の糸口を提供してくれます。
「もっと効率的に診療したい」「職員の残業を減らしたい」「患者満足度を高めたい」と感じながらも、導入コストや申請手続きの煩雑さから、一歩踏み出せずにいるクリニックは少なくありません。そうしたハードルを乗り越える手段として、この補助金制度は非常に有効です。
国が用意した仕組みを最大限に活用し、限られたリソースでも最大限のパフォーマンスを引き出せる体制を、今こそ構築するタイミングです。
まずは自院が対象になるか無料でチェック
申請にはいくつかの条件があり、すべての医療機関が無条件で対象となるわけではありません。ですが、自院が制度の対象に該当するかどうかは、無料の簡易診断ですぐに確認することが可能です。
【チェック項目の一例】
・医療法人または個人開業医である
・常勤換算職員数が300人未満
・登録ITツールを導入予定である
・gBizIDプライムやSECURITY ACTIONを取得済、または取得可能
特にこれから開業する予定のクリニックや、システムを入れ替えたいと検討しているケースでは、導入前の計画段階で診断を受けておくことで、申請スケジュールに余裕を持たせることができます。
PULL-NETでは、こうした初期の制度診断から、ツールの選定・申請代行・導入後のサポートまでをワンストップで提供しています。
IT導入支援事業者と連携して申請をスムーズに
補助金の申請は、医療機関単独では行えません。事前に認定を受けた「IT導入支援事業者」と連携することが必要です。支援事業者は、ツールの選定から導入費用の見積もり、申請書類の作成までをサポートしてくれる心強いパートナーです。
【良い支援事業者を選ぶためのポイント】
・医療機関向けのIT導入実績が豊富である
・電子カルテやレセコンなど、医療向けツールに精通している
・補助金制度に関する最新の知見を持っている
・導入後の操作研修・保守サポートまで対応してくれる
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